秋草

島崎藤村

秋草書籍情報

底本:「日本の名随筆19 秋」作品社
   1984(昭和59)年5月25日第1刷発行
底本の親本:「藤村全集 第一三巻」筑摩書房
   1967(昭和42)年9月
入力:土屋隆
校正:noriko saito

秋草 5

島崎藤村

というは、隣家にめぐらしてある高いトタン塀から来る反射が、まともにわたしの家の入口の格子をも露地に接した窓をも射るからであった。わたしはまだ日の出ないうちに朝顔に水をそそぐことの発育を促すに好い方法であると知って、それを毎朝の日課のようにしているうちに、そこにも可憐な秋草の成長を見た。花のさまざま、葉のさまざま、蔓のさまざまを見ても、朝顔はかなり古い草かと思う。蒸暑く寝苦しい夜を送った後なぞ、わたしは町の空の白まないうちに起きて、夜明け前の静かさを楽しむこともある。二階の窓をあけて見ると、まだ垣も暗い。